田仲愛子さん (岩成台在住・1949年生まれ)

   

 

 高蔵寺ニュータウンに住んで25年。
 「小ぢんまりとしたこの街が大好き。好きなこの街で老いを迎えたい」
 そんな思いもあって、2003年に“お互いさま”の気持ちを大事にした生活支援の有償ボランティアサービスを岩成台で始めた。そして昨年1月には、NPO法人あいの会「春日井まごころ」を立ち上げ介護保険事業も始めた。そこにも、根底には“お互いさま”の気持ちをこめる。
 困った人がいると知らん顔をしていられないのが、この人。
 事業を始めたからには訪問介護支援だけでなく一刻も早く通所介護支援も始めたいと、自宅を開放してデイサービスを始めてしまった。今では通うのを楽しみにするお年寄りも増えた。リビングの丸いテーブルを囲んで談笑するお年寄りのそばで、愛犬の「ナナ」が尻尾を振っている。


 「春日井まごころ」の立ち上げは自分の強い思いがあってのことではなく、「自然の成り行き」と言う。だが、その下地は介護保険の始まるずっと前から彼女の中では積み上げられ、出来上がっていた。

 現在「春日井まごころ」の理事長を務めてもらっている大西氏とは大学時代からの知人。15年以上前、伊勢市在住の大西氏から母親の介護の相談をうけ、家族力の弱体化を地域で支える必要性を感じるようになっていた。
 「介護をお嫁さんだけに任せる時代ではない。地域のボランティアで支えたらいいのではないか?」。そう考えた二人は、伊勢市にも子育て後の女性たちの潜在的力があることを知り、その女性たちのボランティア力をそこに生かそうと考えた。
  「さわやか福祉財団」の堀田力氏をはじめ、国や県のトップと渡り合える大西氏の力もあり、1990年に先駆的な有償ボランティア組織として「伊勢まごころサービス」は立ち上がった。介護保険制度が始まった2000年にはNPO法人も取得し、介護保険事業も始めた。
 相談という形であっても首を突っ込んだ以上責任もあると、遠く離れた地のことではあったが、自分で出来る範囲のことならと、手伝いを買って出る。法人化に際しては副理事長も引き受けた。
 「それまで洋裁師として好きなことをさせてもらってきました。でもそれは自己満足の範囲。言い出しっぺでもありますし、社会のお役に立つならと…。」

 高蔵寺ニュータウンでは20年前から小さなオートクチュールの店を持っていた。
店を持ち始めた30代の頃、年配のお客様から聞く「年をとるとね…」という話は世間話の一つでしかなかったが、50代になった今、そのどれもが自分のことになっていた。自分の街にも、生活支援サービスの必要性を感じる。そして「春日井まごころ」は生まれた。

 この春、自分の意に沿わないことは一切認めないで人生を送ってきた末期がんの老人の最期に関わることとなった。人間不信に陥って、誰にも心を開けなかった老人に、誠心誠意向き合った。家の中に入ることを許され、冗談交じりの会話も交わしてもらえるようになった。そして老人の最後の外出に付き添った。乞われて昼食も共にした。そこには老人の穏やかな顔があった。
 しかし、結果は孤独死を目の当たりにすることとなり、どこか割り切れない思いも残る。今、「ターミナルケア」・「人間の尊厳」の言葉が重くのしかかる。
 相手の立場に立ち、精一杯のことをするのは当たり前。でも、頭で考える事とは違うことが毎日おきる。彼女はそれがケアの仕事と思っている。
 「尊厳とは…」をいつも心に、地域の中で最期まで質の高い生活を送るためのお手伝いをしたいと考える。