笠原秀雄さん(岩成台在住・1921年生まれ)

 26年前までは化学と数学を教える高校教師だった。教えることが好きなのは言うまでもない。が、今は人の話を聞くことも面白くって仕方がない。知らないことを知る楽しさは、何にも勝るとさえ思うようになった。
  
 年間100冊以上の本を買って読む。そのお金はバカにならない。図書館にも通ったが、4年前にもっといい方法を見つけた。それは、NHKの放送大学で学ぶこと。入学要綱には学びたいことがズラリと並んでいた。専門の化学や数学はもちろん、天文学・生物学・地球構造学・医学…。テレビを通じて学べる気軽さがあった。80歳を目前にした年に入学を敢行。
 大学を卒業してから50年以上も経っての再びの学び。それは化学一つとっても、全く新しい学問をするような錯覚に陥るようだったという。日々進化する学問の道を見た。
 「記憶力は鈍っているので試験は苦労する」と言うが、経験から総合的な判断は若い人に負けないと自負。あと1年もすれば卒業できそうと、胸をはる。
 
 教師時代、暗記だけの勉強をさせても仕方がないと、型破りな授業や試験を試みたこともある。根っから教えることが好きだったこの人、リタイア後も家庭教師などをして子どもたちを指導してきた。しかし、親からは成績アップのみを要求される。子どもに学びの楽しさを伝えたいと思ってもなかなか、叶わない。それと、子どもを教えるには「おじいさん」になりすぎた。もっと違う形で、学びの楽しさを伝えたいと思うようになる。
 93歳で聖路加病院の理事長を務める日野原重明先生の主宰する「新老人の会・東海支部」に入会した時、あることが、ひらめいた。放送大学の学生の4分の1は50歳以上。生きることに、学ぶことに前向きな大人たちがいっぱい。そんな大人たちにも自分の持っている知識を伝えよう。それを地域の中でできたら…。夢が広がった。

 今年初めから「頭の体操しませんか」と題して、数の不思議や面白い計算方法、魔方陣、数と占いなどをテーマに無料講座を自ら企画する。
 「暗号の数字って誰が作る」とか「解読への手がかりをつかむ方法」とか「円周率は現在9億桁まで分かっている」とか、「その9億と言う数字の膨大さを実感する方法」とか…。数字(数学)に弱い者でもその話は「へぇ〜」と面白く聞ける。

 見るもの聞くもの何にでも興味を持ってしまうタイプでもある。見知らぬ外国への興味は当然のこと。すでにヨーロッパは、アルバニアとアイスランド以外は全部訪ねた。最初のうちこそツアーでの参加だったが、飽き足らず、60歳頃からは一人旅を楽しむ。年を重ねた今、外国旅行に関してはさすがに一人旅は不安。ツアーでの参加に戻した。だが、国内旅行は相変わらず一人旅。飛行機の「超割切符」を片手に、どこへもひとっ飛び。しかも行く先々ではレンタカーを使って行動範囲を広げ、地元の人との交流を楽しむ。年賀状の交換枚数500枚のうち半分はそんな旅で知り合った人たち。
「人との出逢いって、とってもいいですねぇ〜」。細い目をさらに細めて言う。
 このスーパー老人のエネルギーの源泉は、ひょっとして見知らぬ人との出会いの中?
きっと、そうに違いない。
(下の写真は、名古屋トヨペットの会議室を借りての「頭の体操しませんか」第2回の様子。)