波多野健治 さん(岩成台在住・1950年生まれ)

  本来、コーヒーは健康的な飲み物。古来エチオピアでは胃の痛みを治す薬として用いられてきた。新鮮で良質のコーヒーは二日酔いの解消や美容効果、さらに肥満予防もあるという。最近になってようやくそのことが認知されるようになって溜飲を下げているのが波多野さんだ。ただし「新鮮なコーヒー」でなくてはならないと強調する。

 コーヒーの大手メーカーで働くこと11年。営業畑にいる頃、一日に十数杯のコーヒーを口にしていた。仕事柄、まずいコーヒーを出されても飲まないわけにはいかなかった。飲みすぎて嘔吐をするほど胃を悪くした。そんな頃、自家焙煎のコーヒー店に入った。そのコーヒーは胃の中に消え入るように染み渡っていった。「旨い!」「この旨さは一体どこから?」。今まで口にしていた大量生産、大量販売のコーヒーとの違いが頭の中を駆け巡った。コーヒーは鮮度が命であることを思い知る。それもそのはず、コーヒーは厳密には焙煎したその時から酸化が始まる。にもかかわらずメーカーで言う消費期限は1年半。
 体を悪くしてしまうようなコーヒーではなく、体に負担をかけないコーヒーを多くの人に知って欲しい。コーヒーの奥深さを知って欲しい。手間ひまをかけ、心を込めて淹れるコーヒーの旨さを伝えたい。脱サラを決意する。

 赴任先の北海道から出身地に戻り、家族とともに小さな自家焙煎のコーヒー豆専門店を開店させた。それから既に16年。コーヒー文化を地域住民に伝えるための地道な啓蒙活動をしながらの店は高蔵寺では誰もが知る店に成長した。
 地域密着の店を心がける。小中学校のPTAから「美味しいコーヒーの淹れ方講座」を依頼されることも多い。コーヒーの美味しさを伝えながら、地域の人たちとふれ合えるならばと、無償に近くても講師を務める。
  レギュラーコーヒーを家庭で飲む習慣が一般的になったのは、まだ最近のことだ。20年程前にはインスタントコーヒーとの違いを聞かれることが多かった。しかし、今は違う。講座では、コーヒーには硬水がいいか軟水が良いか、というような高度(?)な質問まで飛び出す。隔世の感だ。エスプレッソの点て方や道具の良し悪しなども教える。

  より一層おいしいコーヒーを創造するために、良質な生豆を輸入するための方策も考える。インターネットを使い、産直のコーヒーも扱う。これからは栽培方法から考える必要も思う。よいものを育てれば、よいコーヒーができる。自明の理。さらに現地の栽培農家の人たちの過酷な農作業も思う。フェアトレード商品の取り扱いも考えている。
 波多野さんのコーヒーへの限りない情熱は、独自の焙煎技法や徹底したハンドピック(欠点豆・不良豆の手選別や除去)、鮮度保持のための少量焙煎へのこだわりにも見ることができる。「コーヒーは文化なんです」。波多野さんの持論だ。